米共和党、オバマケア撤廃に失敗

共和党とトランプ大統領が進めてきたオバマケア撤廃法案が賛成票不足ということで採決にかけられないことになりました。もともと民主党からの賛成はゼロで、共和党だけで過半数を取らなければなりませんでした。下院は定数が435ですから法案可決に必要な過半数は218です。現在のところ下院共和党の議席は237ですから、造反議員は19人までしか出せないことになります。結局それ以上の共和党議員が反対を表明していたということでしょうね。
今回の投票に先だって議会予算局が今後の予測を出していたのですが、それによると共和党の代替案では即座に1,400万人が保険を失い、その後2026年までに保険を失う人の数が2,400万人に膨れ上がるとされていました。これに危惧を抱いたのが穏健派でした。地元からたくさんの反対の電話をもらって、法案に賛成はしかねるという議員がいたようです。また逆に保守強硬派からの反対もありました。保守強硬派は共和党の代替案をオバマケアライトと呼んで、オバマケアの条項が一部残り、政府の財政支出も大きく、まだ十分撤廃になっていないと主張したのです。
もし穏健派の意見を聞いて、保険を失う人の数をもっと少なくするようにすれば、保守派からの反発はさらに大きくなり、逆に保守派の意見を聞けば今度は穏健派の反発を招くというジレンマに指導部は陥ってしまい、結局法案取り下げとなってしまいました。

ここで面白く感じるのはアメリカと日本の議会制度の違いですね。日本では党議拘束がありますから、党が決めた方針に所属する議員が反対することはあまりありません。造反議員が罰を受けることもあります。小泉政権時代の郵政改革では造反議員が自民党を離党させられた上に、その後の選挙では刺客を送られ、多くが落選しました。
しかしアメリカは議員一人一人の独立性が強く、共和党議員だから自動的にトランプ大統領や共和党指導部が出した法案に賛成するというわけではないのです。そのため共和党指導部やトランプ大統領自身も反対する議員を一人一人説得していました。トランプ大統領などはもし反対するようであれば、次の選挙には勝てないかもしれないよと脅迫めいたことまで言っていました。しかしその努力も虚しく必要な票数を確保出来なかったというわけです。
ポール・ライアン下院議長はこれからテレビで今後どのようにオバマケア撤廃を実現するか議論すると言っていました。まだオバマケア撤廃を諦めていないような口ぶりですが、はたして今後共和党を団結させることの出来る法案を作れるのでしょうか?トランプ大統領もまだこれに政治的資源を使うのか、それとも次の減税などの問題に焦点を移すのか、悩ましいところでしょう。

今回の採択中止をアメリカのリベラルメディアは嬉しそうに伝えています。彼らはトランプ大統領から敵視されてきましたから、よほど嬉しいのかもしれません。「トランプ大統領にとって『壊滅的』な打撃」などと扇情的な言葉がニュースでは飛び交っています。ちょっとはしゃぎすぎという気がしますけどね。
このオバマケアの廃止は共和党にとっては法案成立当初からの悲願でした。そもそもオバマケアは一票の共和党の賛成もなく、民主党だけで成立したものでした。その後共和党は下院で多数派を奪還すると、これまでに60以上オバマケア廃止法案を通してきました。しかし上院を通らなかったり、上院を通ったとしてもオバマ大統領の拒否権発動でことごとく廃案にされてきました。また訴訟もたくさん起こされました。そして企業が従業員に提供する保険から避妊薬を適用対象外にさせるなど、一定の勝利も収めました。しかし完全な撤廃は実現出来ませんでした。
またトランプ大統領にとってもこれは選挙戦中一番声高に訴えたことでした。彼はオバマケアを「完全な大失敗」と呼び、自分が大統領になったら必ず撤廃すると選挙戦中から合計すると60回以上約束してきました。そしてもっと安く、もっと多くの人が加入出来るよりよいものに替えると言ってきたのです。しかしその約束が見事に頓挫してしまったことは、彼にとってやはり「壊滅的」な打撃なのかもしれません。

オバマケアはアメリカ人にはあまり好まれていません。その一つの理由が保険料が高騰したことです。アメリカ政府のまとめでは2017年に保険料が平均25%上がると分かりました。オバマ大統領はオバマケアにより保険料は下がると言ってきたので、これは大きな誤算でした。トランプ大統領当選の原動力のひとつになったかもしれません。オバマケアによって初めて保険に入ることが出来た人達とは違い、オバマケア以前から自分で保険に加入していた人達にとっては、自分にとっては何も変化はないのにオバマケアのせいで保険料を余計に払わされることになったのです。他人の保険のために自分がなぜお金を払わされるのかという気にもなるでしょう。
そしてまた嫌われているのが強制加入です。アメリカ人、特に保守派は政府が自分たちの生活に介入してくることを嫌います。政府が国民に無理矢理保険に入らせるなど、彼らにとっては政府の越権行為にしか見えないのです。ですから彼らにとって今回の失敗は大きな失望に違いありません。
実はオバマケアは保険会社にとってもあまりおいしい商売ではありません。オバマケアの元では利益がなかなか出せないため、オバマケアから撤退する保険会社が何社かでています。そのためオバマケアは放っておけば自滅する言われています。
一方でオバマケアのおかげで保険に入れるようになった人達はもちろん今回のことを喜んでいるでしょう。病院も保険に入った人が病院にかかるようになり、無保険の人から治療費を取りっぱぐれることが減ったので喜んでいるといいます。
今後共和党は再度撤廃に挑戦するのか、それとも民主党と協力してオバマケアの修正に向かうのか、どちらになるのでしょうか?即日融資キャッシング